つくば自然育児の会の会報で連載してきた原稿を、こちらでもアップしておきます。
いつも2年ほど前の原稿を遅れ遅れで転載していましたが
今回はタイムリーな話題でもあるので、最新の原稿を。
・・・・・・
(2021/11/29執筆 会報no.259 12月分)
【お気楽自然育児Vol.19】冬こそ!「熱源の確保」
miya :茨城県北の大子町に移住して12・7・5・2歳の子育て中
下3人はホームスクール&家庭保育でワイワイやってます
下3人はホームスクール&家庭保育でワイワイやってます
「備えあれば憂いなし」。こんにちは、憂いが多いからこそ備えて安心したいmiyaです。薪ストーブの熱を背中にぬくぬく浴びながら真夜中に書いています。外気は−3℃、明日は朝の8時まで−5℃が続く予報です。これからどんどん冬!自分や家族を守るための「熱源の確保」について語らせてください〜。
●全部、当たり前じゃなくなってきた
2019年に千葉県南部を襲った台風被害では、電柱2000本が倒れて2週間の停電になりました。電力会社の人に地域の方が怒りをぶつけたり、エアコンがつかなくて暑い!と話す様子は、電気に依存した暮らしの危うさ・無責任さが顕著で、記憶に強く残りました。
スエズ運河での座礁事故は大きく報道されて記憶に新しいですが、目立たないところでも2年前から始まった半導体の不足に続いて、高圧ケーブルの供給が関連会社全てで停止する、ウッドショックで安価だった輸入材でさえ価格が倍になるなど、供給されて当然と思っていたものが急に手に入らなくなったり、高騰したりということが増えてきました。ガソリンも灯油もずいぶん高くなっています。いつまでも依存してはいられません。
家のことを切り盛りする私たち母親こそが、生活インフラの備えを検討していかなければと思います。しかも経済的にも節約になる、とくれば、俄然ワクワクします。
●試しにガスを解約してみた
我が家はお風呂が石油ボイラー(ほぼ使ってない)、ガス契約は台所だけ、で基本料金が使用料よりはるかに高かったので、8月末でガス契約を解除しました。その後の調理はカセットコンロ1台と、庭の焚き火、秋からは薪ストーブであれこれやっています。
カセットコンロ1台しかないと、ガスボンベ1本の値段(ポイント払いで買ってるので実質無料なんですが…)を思い浮かべながらケチケチ使うようになり、使用本数を壁に貼ることでガス使用量&使用料の見える化がいっきに進みました。
しかし所詮はガスに過ぎないため、11月後半からは薪ストーブの頻度を上げ、調理の7割を薪ストーブでまかなうようにしています。オーブン型の薪ストーブを持つ友人は、クッキーやケーキを毎日焼いて楽しんでおり、いつか台所にはこのタイプが欲しいなぁと考えています。4月から住む予定の古民家は100畳あり、薪ストーブ1台では難しいかもしれないのです。
(ストーブの上に載せるだけでなく、直火も大きさに応じて使えるのが便利)
●重要な機能は「別の方法」も用意しておこう!
パーマカルチャー(永続的な循環型農業で人と自然が豊かになる関係づくりを行うためのデザイン手法)の原則のひとつに「重要機能のバックアップ」というものがあります。これはつまり、生きていく上で欠かすことのできないことやものには複数のバックアップを用意する、ということです。
例えば「水」なら、水道とは別に、バックアップとして井戸、水路、池、雨水タンクなど、水道に頼らずに「水」を得る方法を確保すること、がこれにあたります。
今回のテーマは、「熱源」の確保について。熱=暖める・調理する。なぜ熱源を取り上げるかといえば、水と同じく「保温」と「食事」は生命に直結する事柄だからです。寒さが厳しくなるこの時期に、急に電気やガスが止まったり、石油の輸入が停止したり、してしまったら…?
電気・ガス等に頼りすぎない(供給が止まっても困らない)手段を用意しておくことで、防災対策にもなり、持続可能で地球に優しい方法へ、次第にシフトしていくことができる。そう思うと、熱源のバックアップがあれば、心強いですよね。
●焚き火と煮炊きには知恵がいっぱい
私はつくば時代に畑や庭でたくさん焚き火をしたこと、火鉢で炭のおこし方に苦戦したこと、千葉の「パーマカルチャーと平和道場」でペール缶のロケットストーブ2台だけで毎日火起こしして料理するしかなかったこと、などからずいぶん貪欲に学ぶことができました。
特に、鹿児島のヨホホ研究所からテンダーさんが千葉に来てくれ、縄文火起こしWSでロケットストーブでお米を炊くまでを実演してくれたときに、風を防いで熱を逃さない工夫、乾いた薪だけでなく半乾きや湿った薪をロケットストーブの周囲に立てかけて輻射熱で乾かしておく段取りまで、とにかく毎日本気で焚き木や火と向き合って暮らしているテンダーさんならではの熱量で教えてくれたことが、今も大きな財産になっています。
育児の会のみなさんも、外遊びの会「はらっぱ」で焚き火を担当していくと、焚き火調理のスキルが爆上がりなんじゃないでしょうか〜♪
●<暖房>のバックアップ
冬の寒さはどのように凌いでいますか?エアコン(電気)、ストーブ(電気・石油)、こたつ(電気)、ヒーター(電気・ガス・石油)、ホットカーペット(電気)、床暖房(電気・ガス)…本当に色んなものがありますね。つくばなら、大規模停電でも凍死することはないでしょうけれど、小さい子供を抱えて寒いなか非常事態を乗り切る日々、なんて考えただけで大変です。
日ごろから炭の扱いに慣れておけば火鉢、七輪、囲炉裏などで暖を取れますし、煙にうるさくない立地なら薪ストーブが断然便利。いずれも調理の機能を兼ね備えています。
家の南側にサンルーム(温室)があれば、昼間はそこで快適に暖かく過ごすことができますし、洗濯物や乾物作り、植物のお世話など色々と便利です。
我が家はつくば時代は暖房なし生活を貫いていました。極寒の時期は料理中、ガスコンロの火のそばに丸い石を並べて温石(おんじゃく)を作り、布に包んで懐に入れて持ち歩き、ホッカイロのように暖を取ったり、当時私はまだ冷え性だったので陶器の湯たんぽで布団を暖めてたりしていました。
移住した大子町(だいごまち)は真冬、寒いときは−14℃まで冷え込むため、引越し後の12月(遅!)にかなり安価な薪ストーブを自分達で設置しました。もちろん薪にお金はかけず、雑木や裏山・庭の枯れ枝・剪定枝を使って、夜を暖かく過ごしています。
そうそう、つくばでも大子でも、古い日本家屋は南からの日光をたっぷり取り入れる造りなので、冬はぽかぽか暖かい縁側がサンルームそのもの。縁側で食事をしたり遊んだりお昼寝したりと、猫のように縁側で過ごす毎日です。
●<調理>のバックアップ
さて、今の調理環境を振り返って、電気・ガスが止まっても家族みんなが困らない程度の代替手段はありますか?アウトドアと思えば焚き火もBBQグリルも、料理に使えますね。昔ながらの七輪、囲炉裏、かまど、新しいものではソーラーオーブン、薪ストーブ、ロケットストーブ、ウッドガスストーブなどがおすすめです。以下、いくつか詳しくご紹介していきます。
【焚き火】うちはコンクリブロック4つを二段の八の字に積み、奥も縦にブロックで塞いだ状態で、庭に置いてあります。手前から奥へと火が吸い込まれ、上昇気流で強火調理ができてオススメです。そうだ、ガスコンロ買い替え時には五徳だけは取っておくといいですよ!何かと使えます。
ブロックがなくても、地面に穴を掘って石を敷き詰めると熱効率があがります。石を積んでもそれなりに。目的や状況に応じた焚き火の方法は川口拓さんの『ブッシュクラフト-大人の野遊びマニュアル サバイバル技術で楽しむ新しいキャンプスタイル』に詳しいです。一家に一冊の良書。
【七輪】七輪は炭を入れて使うのが基本ですが、枯れ枝を集めて火をつけることもできます。通気口の開閉で火力が調整でき、上部は五徳の形をしているので直接鍋を載せられ、もちろん網焼き調理はお手の物。七輪自体がとても熱くなるので家に入れる場合はレンガなどに載せないと床が焦げます(やりました)。実家などで持て余して転がっている七輪、ありませんか。買わずともあちこちの物置に眠っています。
※炭は買わなくても作れます。焚き火で大きな木が燃えて真っ黒になった後に水をかけると炭っぽくなりますね。直径6〜10cmくらいの枝ならこの作り方でも、乾かせば炭として使えます。空気を遮断する火消し壺は、炭の再利用がしやすく便利。今はアウトドア用のおしゃれなものが増えています。
【囲炉裏】とろ火から強火まで自在で、家屋も長持ちする万能の存在。古民家の囲炉裏を再生するか、思案中です。しかし現在家に囲炉裏がある人はかなり少ないと思うので、新しい囲炉裏をちょっとご紹介します。田舎暮らしの本をたくさん書いておられる大内正伸さんは「囲炉裏暖炉」を考案していて、本まで出したほど。屋内でも二階でも囲炉裏が薪ストーブのように楽しめるので、予算のある方、新築予定の方におすすめ。また別の本で『囲炉裏と薪火暮らしの本』は、囲炉裏のつくり方、使い方から火鉢、七輪、行火、さらにはカマド、ロケットストーブ等の構造や使い方まであって参考になります。大内さんの本は、家にポンと置いておけば旦那さんのほうが乗り気になること間違いなしです(笑)。
【ソーラーオーブン】ソーラークッカーとも言います。太陽熱で煮炊きするエコな道具で、お日様さえあれば放っておいても料理できる優れもの。千葉の「パーマカルチャーと平和道場」に半年いたときは、ソーヤー海くんイチオシの「SUN OVEN」というアメリカ製、箱型のソーラーオーブンを使っていて、焼き芋から煮物からパンまで、本当に便利でした。また、メンバー数人が栃木の非電化工房を見学に行き、真空管のソーラーオーブンを買って帰り、よくお湯を沸かしていました。通販でも真空管タイプが増えていますが、手入れしにくい&割れたら終わり&少ししか料理が作れない、ので私が買うなら絶対箱型です。何なら記憶で作れると思います、いつか。有名なパラボラ型はとにかく場所を取りすぎて、主婦としては現実的ではありません。
【薪ストーブ】新築で、素敵な鋳物の薪ストーブを設置しているおうちも多いのでは。うちは低予算か無料がモットーなので、新保製作所の3万円の薪ストーブ(の新古をジモティーで1万円で貰い受けた)、設置はDIYです。いいの、家1軒じゃなくて2〜4部屋を暖めるだけだから。こんなときも廊下や壁で区切られていない日本家屋、最高です。
煙突掃除のしやすいように設計してから設置すると、自分達で管理できて維持費もかかりません。業者さんに設置してもらった人と、自分で設置して長年使っている人とで、天と地ほどの差があります。3〜4人でいいので、自分で設置している方々の話を聞いたり見たりできれば、薪ストーブ設置が腰を抜かすほど安く&簡単になります。
うちは薪ストーブが煙突部品含めると全部で6.5万円、消防法も条例も確認して周辺にレンガなど敷いて過剰なほど厳重にしても総額7万円ちょっとでした。専門業者さんの情報だけ見てしまうと総額100〜200万なんてこともあるので、もっと広く検討できるといいですね。
(ペール缶や一斗缶で作れろ軽量のロケットストーブは、レジャーや屋外イベントに便利)
【ロケットストーブ】少ない焚き木で強い火力が出せる、煮炊きの優秀選手。有名なのは一斗缶やペール缶を使ってエビ曲煙突を入れ、断熱にバーミキュライトを詰めた軽量携帯タイプか、ドラム缶で作って丸ごと珪藻土なんかで包み、ベンチまで作って熱を活用する大型据え置きタイプ。千葉ではペール缶ロケットストーブを毎日使っていたのですが、金属が割と早く劣化するのが難点だなと感じていました。
以来ずっと構造を考えて過ごし、ついに2019年の台風を期に、台所の勝手口にロケットストーブを自作。耐火レンガで、固定しないのに耐久性のあるオリジナル仕様です。ガスが使えないときの備えとして勝手口に設置していましたが、今は引越し予定の古民家に運び入れ、暖房と調理、屋根裏の燻しを兼ね、吹き抜けの土間に置いて使っています。
●<お風呂>のバックアップ (お風呂は重要と思いませんが、一応書いておきます)
電気、ガス、石油。どれかひとつで沸かすタイプのお風呂が多いと思います。屋根に太陽熱温水器をつけているお宅はどれくらいあるでしょうか?私は実家にありましたが、晴れの日なら冬も40℃のお湯がたっぷり用意でき、新たに沸かす必要がないほどでした。今思えばガスに頼り過ぎず、災害時も水道とお日様があればお湯が確保でき、便利でした。持ち家で太陽熱温水器が付けられる方が羨ましい〜。
あとは…薪をくべて五右衛門風呂、とまではいかずとも、今のお風呂場のまま、薪と灯油が兼用できる薪兼用風呂釜ボイラーをつけることはできます(薪は煙が出るので、密集した住宅地はダメかも)。我が家も4月から築153年の古民家に引っ越すのですが、とっくにお風呂のボイラーが壊れているので、交換ついでに薪兼用タイプのボイラーをつけるつもりです。
黒いタンクに水を入れて日のあたる場所に置いて温水を作り、(暖かい昼間のうちに)高いところから流してシャワーにするのはとても簡単。丸型ではなく四角型のペットボトル数本を黒に塗装しておくだけでも立派な備えになります。お子さんと遊びと学びを兼ねて、作ってみるのはいかがでしょう?
はい、語りきれずに紙面が尽きました。簡単なところから楽しんで手段を増やしたいですね!では〜!
※この冬はBlog『雑草屋の嫁日記』に、ロケットストーブ、薪ストーブ、ガス解約などの記事をまとめる予定です。ご参考になれば幸いです。また、次回の連載テーマを募集中!miyaまでお気軽にリクエストくださいませ。
・・・・・・
つくば自然育児の会 連載記事一覧:
【Vol.19】冬こそ!「熱源の確保」[2021/11/29]
【Vol.7】セットで大切「食と農」[2019/06/20]
【Vol.6】奥が深いよ「自然なお産」[2019/04/25]
【Vol.5】未来を守る「持続可能な子育て」[2019/02/17]
【Vol.4】まずは家庭で「お手当て」 [2018/11/29]
【Vol.3】強い子になる「外遊び」 [2018/09/22]
【Vol.2】気軽に試そう「布おむつ」 [2018/06/19]
【Vol.1】春夏に楽しむ「おむつなし育児」 [2018/05/12]
電子レンジなし生活のコツ [2015/08/07]
虫さされ対策 [2015/07/11]