2021年12月12日

【お気楽自然育児Vol.19】冬こそ!「熱源の確保」

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つくば自然育児の会の会報で連載してきた原稿を、こちらでもアップしておきます。

いつも2年ほど前の原稿を遅れ遅れで転載していましたが
今回はタイムリーな話題でもあるので、最新の原稿を。

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(2021/11/29執筆 会報no.259 12月分)

【お気楽自然育児Vol.19】冬こそ!「熱源の確保」


miya :茨城県北の大子町に移住して12・7・5・2歳の子育て中
下3人はホームスクール&家庭保育でワイワイやってます


 「備えあれば憂いなし」。こんにちは、憂いが多いからこそ備えて安心したいmiyaです。薪ストーブの熱を背中にぬくぬく浴びながら真夜中に書いています。外気は−3℃、明日は朝の8時まで−5℃が続く予報です。これからどんどん冬!自分や家族を守るための「熱源の確保」について語らせてください〜。

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●全部、当たり前じゃなくなってきた

 2019年に千葉県南部を襲った台風被害では、電柱2000本が倒れて2週間の停電になりました。電力会社の人に地域の方が怒りをぶつけたり、エアコンがつかなくて暑い!と話す様子は、電気に依存した暮らしの危うさ・無責任さが顕著で、記憶に強く残りました。
 スエズ運河での座礁事故は大きく報道されて記憶に新しいですが、目立たないところでも2年前から始まった半導体の不足に続いて、高圧ケーブルの供給が関連会社全てで停止する、ウッドショックで安価だった輸入材でさえ価格が倍になるなど、供給されて当然と思っていたものが急に手に入らなくなったり、高騰したりということが増えてきました。ガソリンも灯油もずいぶん高くなっています。いつまでも依存してはいられません。
 家のことを切り盛りする私たち母親こそが、生活インフラの備えを検討していかなければと思います。しかも経済的にも節約になる、とくれば、俄然ワクワクします。


●試しにガスを解約してみた

 我が家はお風呂が石油ボイラー(ほぼ使ってない)、ガス契約は台所だけ、で基本料金が使用料よりはるかに高かったので、8月末でガス契約を解除しました。その後の調理はカセットコンロ1台と、庭の焚き火、秋からは薪ストーブであれこれやっています。

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 カセットコンロ1台しかないと、ガスボンベ1本の値段(ポイント払いで買ってるので実質無料なんですが…)を思い浮かべながらケチケチ使うようになり、使用本数を壁に貼ることでガス使用量&使用料の見える化がいっきに進みました。

 しかし所詮はガスに過ぎないため、11月後半からは薪ストーブの頻度を上げ、調理の7割を薪ストーブでまかなうようにしています。オーブン型の薪ストーブを持つ友人は、クッキーやケーキを毎日焼いて楽しんでおり、いつか台所にはこのタイプが欲しいなぁと考えています。4月から住む予定の古民家は100畳あり、薪ストーブ1台では難しいかもしれないのです。

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(ストーブの上に載せるだけでなく、直火も大きさに応じて使えるのが便利)


●重要な機能は「別の方法」も用意しておこう!

 パーマカルチャー(永続的な循環型農業で人と自然が豊かになる関係づくりを行うためのデザイン手法)の原則のひとつに「重要機能のバックアップ」というものがあります。これはつまり、生きていく上で欠かすことのできないことやものには複数のバックアップを用意する、ということです。
 例えば「」なら、水道とは別に、バックアップとして井戸水路雨水タンクなど、水道に頼らずに「水」を得る方法を確保すること、がこれにあたります。

 今回のテーマは、「熱源」の確保について。熱=暖める・調理する。なぜ熱源を取り上げるかといえば、水と同じく「保温」と「食事」は生命に直結する事柄だからです。寒さが厳しくなるこの時期に、急に電気やガスが止まったり、石油の輸入が停止したり、してしまったら…? 
 電気・ガス等に頼りすぎない(供給が止まっても困らない)手段を用意しておくことで、防災対策にもなり、持続可能で地球に優しい方法へ、次第にシフトしていくことができる。そう思うと、熱源のバックアップがあれば、心強いですよね。

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●焚き火と煮炊きには知恵がいっぱい

 私はつくば時代に畑や庭でたくさん焚き火をしたこと、火鉢で炭のおこし方に苦戦したこと、千葉の「パーマカルチャーと平和道場」でペール缶のロケットストーブ2台だけで毎日火起こしして料理するしかなかったこと、などからずいぶん貪欲に学ぶことができました。

 特に、鹿児島のヨホホ研究所からテンダーさんが千葉に来てくれ、縄文火起こしWSでロケットストーブでお米を炊くまでを実演してくれたときに、風を防いで熱を逃さない工夫、乾いた薪だけでなく半乾きや湿った薪をロケットストーブの周囲に立てかけて輻射熱で乾かしておく段取りまで、とにかく毎日本気で焚き木や火と向き合って暮らしているテンダーさんならではの熱量で教えてくれたことが、今も大きな財産になっています。
 育児の会のみなさんも、外遊びの会「はらっぱで焚き火を担当していくと、焚き火調理のスキルが爆上がりなんじゃないでしょうか〜♪

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●<暖房>のバックアップ

 冬の寒さはどのように凌いでいますか?エアコン(電気)、ストーブ(電気・石油)、こたつ(電気)、ヒーター(電気・ガス・石油)、ホットカーペット(電気)、床暖房(電気・ガス)…本当に色んなものがありますね。つくばなら、大規模停電でも凍死することはないでしょうけれど、小さい子供を抱えて寒いなか非常事態を乗り切る日々、なんて考えただけで大変です。
 日ごろから炭の扱いに慣れておけば火鉢七輪囲炉裏などで暖を取れますし、煙にうるさくない立地なら薪ストーブが断然便利。いずれも調理の機能を兼ね備えています。
 家の南側にサンルーム(温室)があれば、昼間はそこで快適に暖かく過ごすことができますし、洗濯物や乾物作り、植物のお世話など色々と便利です。

 我が家はつくば時代は暖房なし生活を貫いていました。極寒の時期は料理中、ガスコンロの火のそばに丸い石を並べて温石(おんじゃく)を作り、布に包んで懐に入れて持ち歩き、ホッカイロのように暖を取ったり、当時私はまだ冷え性だったので陶器の湯たんぽで布団を暖めてたりしていました。

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 移住した大子町(だいごまち)は真冬、寒いときは−14℃まで冷え込むため、引越し後の12月(遅!)にかなり安価な薪ストーブを自分達で設置しました。もちろん薪にお金はかけず、雑木や裏山・庭の枯れ枝・剪定枝を使って、夜を暖かく過ごしています。

 そうそう、つくばでも大子でも、古い日本家屋は南からの日光をたっぷり取り入れる造りなので、冬はぽかぽか暖かい縁側がサンルームそのもの。縁側で食事をしたり遊んだりお昼寝したりと、猫のように縁側で過ごす毎日です。

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●<調理>のバックアップ

 さて、今の調理環境を振り返って、電気・ガスが止まっても家族みんなが困らない程度の代替手段はありますか?アウトドアと思えば焚き火BBQグリルも、料理に使えますね。昔ながらの七輪囲炉裏かまど、新しいものではソーラーオーブン薪ストーブロケットストーブウッドガスストーブなどがおすすめです。以下、いくつか詳しくご紹介していきます。

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【焚き火】うちはコンクリブロック4つを二段の八の字に積み、奥も縦にブロックで塞いだ状態で、庭に置いてあります。手前から奥へと火が吸い込まれ、上昇気流で強火調理ができてオススメです。そうだ、ガスコンロ買い替え時には五徳だけは取っておくといいですよ!何かと使えます。
 ブロックがなくても、地面に穴を掘って石を敷き詰めると熱効率があがります。石を積んでもそれなりに。目的や状況に応じた焚き火の方法は川口拓さんの『ブッシュクラフト-大人の野遊びマニュアル サバイバル技術で楽しむ新しいキャンプスタイル』に詳しいです。一家に一冊の良書。

【七輪】七輪は炭を入れて使うのが基本ですが、枯れ枝を集めて火をつけることもできます。通気口の開閉で火力が調整でき、上部は五徳の形をしているので直接鍋を載せられ、もちろん網焼き調理はお手の物。七輪自体がとても熱くなるので家に入れる場合はレンガなどに載せないと床が焦げます(やりました)。実家などで持て余して転がっている七輪、ありませんか。買わずともあちこちの物置に眠っています。

※炭は買わなくても作れます。焚き火で大きな木が燃えて真っ黒になった後に水をかけると炭っぽくなりますね。直径6〜10cmくらいの枝ならこの作り方でも、乾かせば炭として使えます。空気を遮断する火消し壺は、炭の再利用がしやすく便利。今はアウトドア用のおしゃれなものが増えています。

【囲炉裏】とろ火から強火まで自在で、家屋も長持ちする万能の存在。古民家の囲炉裏を再生するか、思案中です。しかし現在家に囲炉裏がある人はかなり少ないと思うので、新しい囲炉裏をちょっとご紹介します。田舎暮らしの本をたくさん書いておられる大内正伸さんは「囲炉裏暖炉」を考案していて、本まで出したほど。屋内でも二階でも囲炉裏が薪ストーブのように楽しめるので、予算のある方、新築予定の方におすすめ。また別の本で『囲炉裏と薪火暮らしの本』は、囲炉裏のつくり方、使い方から火鉢、七輪、行火、さらにはカマド、ロケットストーブ等の構造や使い方まであって参考になります。大内さんの本は、家にポンと置いておけば旦那さんのほうが乗り気になること間違いなしです(笑)。

【ソーラーオーブン】ソーラークッカーとも言います。太陽熱で煮炊きするエコな道具で、お日様さえあれば放っておいても料理できる優れもの。千葉の「パーマカルチャーと平和道場」に半年いたときは、ソーヤー海くんイチオシの「SUN OVEN」というアメリカ製、箱型のソーラーオーブンを使っていて、焼き芋から煮物からパンまで、本当に便利でした。また、メンバー数人が栃木の非電化工房を見学に行き、真空管のソーラーオーブンを買って帰り、よくお湯を沸かしていました。通販でも真空管タイプが増えていますが、手入れしにくい&割れたら終わり&少ししか料理が作れない、ので私が買うなら絶対箱型です。何なら記憶で作れると思います、いつか。有名なパラボラ型はとにかく場所を取りすぎて、主婦としては現実的ではありません。

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【薪ストーブ】新築で、素敵な鋳物の薪ストーブを設置しているおうちも多いのでは。うちは低予算か無料がモットーなので、新保製作所の3万円の薪ストーブ(の新古をジモティーで1万円で貰い受けた)、設置はDIYです。いいの、家1軒じゃなくて2〜4部屋を暖めるだけだから。こんなときも廊下や壁で区切られていない日本家屋、最高です。

 煙突掃除のしやすいように設計してから設置すると、自分達で管理できて維持費もかかりません。業者さんに設置してもらった人と、自分で設置して長年使っている人とで、天と地ほどの差があります。3〜4人でいいので、自分で設置している方々の話を聞いたり見たりできれば、薪ストーブ設置が腰を抜かすほど安く&簡単になります。

 うちは薪ストーブが煙突部品含めると全部で6.5万円、消防法も条例も確認して周辺にレンガなど敷いて過剰なほど厳重にしても総額7万円ちょっとでした。専門業者さんの情報だけ見てしまうと総額100〜200万なんてこともあるので、もっと広く検討できるといいですね。

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(ペール缶や一斗缶で作れろ軽量のロケットストーブは、レジャーや屋外イベントに便利)

【ロケットストーブ】少ない焚き木で強い火力が出せる、煮炊きの優秀選手。有名なのは一斗缶やペール缶を使ってエビ曲煙突を入れ、断熱にバーミキュライトを詰めた軽量携帯タイプか、ドラム缶で作って丸ごと珪藻土なんかで包み、ベンチまで作って熱を活用する大型据え置きタイプ。千葉ではペール缶ロケットストーブを毎日使っていたのですが、金属が割と早く劣化するのが難点だなと感じていました。

 以来ずっと構造を考えて過ごし、ついに2019年の台風を期に、台所の勝手口にロケットストーブを自作。耐火レンガで、固定しないのに耐久性のあるオリジナル仕様です。ガスが使えないときの備えとして勝手口に設置していましたが、今は引越し予定の古民家に運び入れ、暖房と調理、屋根裏の燻しを兼ね、吹き抜けの土間に置いて使っています。

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●<お風呂>のバックアップ (お風呂は重要と思いませんが、一応書いておきます)

 電気、ガス、石油。どれかひとつで沸かすタイプのお風呂が多いと思います。屋根に太陽熱温水器をつけているお宅はどれくらいあるでしょうか?私は実家にありましたが、晴れの日なら冬も40℃のお湯がたっぷり用意でき、新たに沸かす必要がないほどでした。今思えばガスに頼り過ぎず、災害時も水道とお日様があればお湯が確保でき、便利でした。持ち家で太陽熱温水器が付けられる方が羨ましい〜。

 あとは…薪をくべて五右衛門風呂、とまではいかずとも、今のお風呂場のまま、薪と灯油が兼用できる薪兼用風呂釜ボイラーをつけることはできます(薪は煙が出るので、密集した住宅地はダメかも)。我が家も4月から築153年の古民家に引っ越すのですが、とっくにお風呂のボイラーが壊れているので、交換ついでに薪兼用タイプのボイラーをつけるつもりです。

 黒いタンクに水を入れて日のあたる場所に置いて温水を作り、(暖かい昼間のうちに)高いところから流してシャワーにするのはとても簡単。丸型ではなく四角型のペットボトル数本を黒に塗装しておくだけでも立派な備えになります。お子さんと遊びと学びを兼ねて、作ってみるのはいかがでしょう?


はい、語りきれずに紙面が尽きました。簡単なところから楽しんで手段を増やしたいですね!では〜!

※この冬はBlog『雑草屋の嫁日記』に、ロケットストーブ、薪ストーブ、ガス解約などの記事をまとめる予定です。ご参考になれば幸いです。また、次回の連載テーマを募集中!miyaまでお気軽にリクエストくださいませ。

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つくば自然育児の会 連載記事一覧:
 【Vol.19】冬こそ!「熱源の確保」[2021/11/29]
 【Vol.7】セットで大切「食と農」[2019/06/20]
 【Vol.6】奥が深いよ「自然なお産」[2019/04/25]
 【Vol.5】未来を守る「持続可能な子育て」[2019/02/17]
 【Vol.4】まずは家庭で「お手当て」 [2018/11/29]
 【Vol.3】強い子になる「外遊び」 [2018/09/22]
 【Vol.2】気軽に試そう「布おむつ」 [2018/06/19]
 【Vol.1】春夏に楽しむ「おむつなし育児」 [2018/05/12]
 電子レンジなし生活のコツ [2015/08/07]
 虫さされ対策 [2015/07/11] 
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2021年06月06日

【お気楽自然育児Vol.7】セットで大切「食と農」

つくば自然育児の会の会報で連載してきた原稿を、こちらでもアップしておきます。
1ヶ月ほどで、執筆した時期に日付を移動しようと思っています。
(2019年夏の原稿で、内容は2年ほど前のものです。)

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(2019/06/20執筆 会報no.247 7月分)

【お気楽自然育児Vol.7】セットで大切「食と農」


miya :家庭保育で9・5・2・0歳の子育て中
長女は小学校に行き始めました〜

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 第4子が生後3ヶ月になり、新生児〜乳児期のおむつなし育児(ホーローおまる使用)が本当に楽チンで素晴らしい!と日々感動しています。だって布おむつが汚れないんです!赤ちゃんの秘めた能力に驚くばかり。次に赤ちゃんを予定している方で、新生児からのおまる生活、やり方など気になる方は声をかけてくださいね。
 さて今日は「食と農」がテーマ。真面目なことも書きますが、巡り巡って「気楽な育児」へとつながりますので、どうかお付き合いくださいませ〜。


●「食べていける仕事」って何だ

 「食える仕事」「○○で食べていく」「食い扶持を稼ぐ」・・・どれも、自立して働くことを指す言葉です。労働の結果が、お金ではなく「食べる」ことで表されています。そして、「You are what you eat.」(あなたは、あなたの食べたものでできている。)そう、食べることは、生きることに直結しています。
 今、95%の都市人口を、わずか5%未満の農業人口で養っているといいます。つまり、20人の現代生活者をたった1人の農家で賄うということ。当然、農業は大規模化した大型農業で、農薬・肥料・F1種の揃い踏みにならざるを得ません。
 すでに少子高齢化が叫ばれているのに、農業人口の高齢化はさらに深刻。子ども達が大人になる頃には、一人の農家でいったい何十人を養うのでしょうか。「買えばいーじゃん」では済まされない事態になりそうですね。

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●野菜の背景を感じる暮らし

 食べ物を大事にしなければならない理由がわからない、という人が増えています。捨てればいいじゃない!という人や、けちけち食べやがってせせこましーんだよ、貧乏くせーな、なんて人もいます(汗)。子どもだけでなく大人にだって、食育の大切さを感じます。

 種を、まいてみませんか。私たちの身体をつくる食べ物を、お野菜を、育ててみませんか。毎日のお世話を、お母さん自身が、楽しんでみませんか。心を寄せて、声をかけて、水をやって。そんな姿を一緒に見ている子どもは、同じように大事にできるようになります。一緒に芽生えから成長を見守り、野菜を収穫して食卓に並ぶまでを、ぜひ体験させてあげてください。

 生産者の方と直接お話しながら買える、ファーマーズマーケットもすごくいいですね。つくばでは、つくいちなどのほか、山新でも毎週日曜に始まりました。ぜひお子さんと一緒に、会話しながら買い物を楽しんでください。「ニコニコ優しいおばあちゃんの卵、美味しいねぇ」「おひげのお兄さんのお野菜、立派だねぇ」なんて、振り返りながら食べていくと、例えスーパーで買った食材でも「このキャベツは誰が作ったキャベツなの?」「キャベツ農家さんがいっしょうけんめい育ててくれたんだよ」「じゃあこのお豆腐は?」なんて会話が、日常になってきます。

 「三つ子の魂、百まで」。食卓で、お父さんお母さんが食べ物を、ひと粒ひと粒まで大事に扱っているかどうか。畑から食卓までの生命の流れ、人の手のかかりようを、暮らしの中で感じているかどうか。三歳くらいまでに、食育の土台ができあがるように思います。

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●とても悲しかった出来事

 お子さんがエプロンや洋服にこぼしたお米、お野菜。お母さんが、パッパと払い落としていませんか?テーブルにこぼしたおかず。台拭きでざーっと拭いて、捨てていませんか?お皿の食べ残し。三角コーナーにドサッと入れていませんか?親が、お母さんが、ひと粒のお米、ひと切れの野菜を尊ぶかどうか。お子さんの食育は、ここからだと思っています。

 つくばにいた頃は来客がとにかく多く、簡単な料理を出すこともしょっちゅうでした。でも、私たちが育てたお米をお客さんがパッパと払い落としたとき、頭をカナヅチでガァンと殴られたほどのショックを受け、呆然としてしまいました。

(そのお米は ひと粒ひと粒 慎重に土におろし 並べ 苗に育てて 稔りを得るまで たくさんの虫や鳥と競い合い 果てしない攻防を繰り返し 手で刈り 手で干し 手と足で脱穀し 精米し 心を込めて炊いたお米です  そのお野菜は たくさんの草や虫に囲まれ 雨だけを頼りにたくましく育ち 輝く宝石を見つけたような思いで 恵みに感謝して収穫し あなた方の喜ぶ顔を想像しながら 優しく洗い 丁寧に刻み 調理したお野菜です)

 そんな言葉がワンワンと頭の中を駆け巡りましたが、農と離れて生きる人にそれを伝えるのも難しくて、ただただ黙ってうつむいていました。気まずくなりたくない、嫌われたくない、という気持ちもあったと思います。以来、食べ物を大事にする・しないが、お付き合いの中で大事な要素になり、またお互いに傷つく要因にもなっています。大らかと大雑把の線引きはなかなか難しく、神経質な人〜って嫌われるのも怖くてあまり言えないんですけどね・・・。



●値段がつけられない

 我が家はずっと、自然農というやり方でお米や野菜を育ててきました。かつてはあちこちで直売もしていましたが。ごくごくまれに、値段だけを見て「スーパーだともっと安いのに」と言ってくるお客さんに対し、種をまいた日から今この瞬間までの途方もない手間、苦労を・・・説明する気すら起きず。

 お米も野菜も、私たちの中では大切すぎて、「商品」として割り切って売ることも、スーパーのような値段で売って何の思い入れもない人に食べられることも、耐えられなくなり、販売そのものをやめてしまいました。
 お米なんて特に、一年がかりで魂込めて育てているので、絶対に値段がつけられない、というのは自然農仲間とよく話すことです。

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●「大事に食べる」を赤ちゃんから

 私は長女が1歳になる前から保育園に預けていて、その頃はせっせと離乳食なんてものを作っては与えていました。でも、スープは倒すわ、おかずはスプーンで飛ばすわ、頭にごはんを塗りたくるわで、出勤前も帰宅後も疲労困憊。高知でかかりつけだった小児科の栄養士さんに相談したところ、「遊び食べするならお盆ごと全部下げちゃって!泣いてももう出さないで。すぐ覚えるから。お腹すいてたらちゃんと座って食べるようになるから。」とアドバイスをもらい、すぐ実践。朝7時から夜7時まで12時間預けていたので、夕方の間食が出ることも考えて夜は少なめに。すると1週間で悪行はおさまり、じっと座って食べられる1歳児になりました。
 春の木村先生(※)の例会でもいいアドバイスがありました。きちんとお腹をすかせて食卓につき、盛り付ける量を少なくすると、食べ散らかさなくなるって、朗報ですよね。

※木村先生 …東関東子育てサポートセンターを主催。保育園運営と並行して関東各地で親子の心身を育てる父子遊び講座を開催。つくば自然育児の会も大変お世話になっている先生です。

 育児の会に入会して、2人目以降は離乳食は一切やらず、1歳すぎてから母乳以外(固形食)をあげ始めるようになりました。遊んだり立ったりしたら即、お膳を下げるので(決して戻さない)、1〜2ヶ月で覚えてくれました。マナーとして理解しているというよりは、反射に近い理解なので、4歳頃までは真の意図はわかっていないかもしれませんが。子どもと同時に相手の方や作ってくださった方も大切にしたい我が家としては、どこに連れて行っても大丈夫なのは本当に助かっています。

 「まだ赤ちゃんだから」「まだ小さいから」、「仕方ないよね」。食べ物で遊ぶのを、食べ散らかすのを、食べかけで残したり吐き出したりするのを、何歳までそのままで、何歳になったら教えるかは、ご家庭それぞれの方針によるでしょう。
 ただ、目の前の食べ物を大事に食べるということは根源的なもの。育児の会にいれば面倒な離乳食作りは不要とわかりますから、大人も食べられる固形食で楽をして、さらに食べ散らかさない工夫をあれこれしてみて、家族みんなで気持ちよく食事の時間を過ごせるように、楽になるように、試してみてはいかがでしょう〜。
(さかのぼって、おっぱいタイムにスマホやテレビなど他のことをしない、というのも善きお手本なのかも!)

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●どこでも生きていける

 動物として考えると、生きるのに大事なことは、食べること、動くこと、眠ること。決して、紙幣を集めることではありません。今どき「食べていける仕事か」を心配するのはごもっともですが、極論を言えば、食べ物を育てていれば、そこそこ働くだけでも大丈夫なのではないかな、、、と思っています。(うちではちょっとだけ働くことを「お金を摘みにいく」と言っています)   色んな海外の方と話していると、ハイパーインフレで1万円が次の日に1円以下になった、なんて話もあって。でも、大根1本は次の日も大根1本。農って本当に重要です。

 去年、千葉県いすみ市にある「パーマカルチャーと平和道場」で研修生として暮らしていた頃は、「消費者から創造者になろう!」のスローガン通り、とにかく日々の暮らしを創造していました。近隣の方々との交流も盛んで、例えば伐採した木(=薪にできる)をくれるというので処分のお手伝いにいくと、さらにお礼といって大量のお野菜をいただいたり、産みたて卵をくださったり。貨幣に依存しすぎない、心あるギフト(贈与)の交わし合いの中で暮らしていました。

 あるとき、都内の大学教授がゼミ生を引き連れて見学取材にやってきました。田畑や火起こし、バイオトイレにテント暮らし、古民家の修繕、タイニーハウスのセルフビルドなどをひと通り見た帰り際、教授はこう訊いたのです。「君達はテレビもないし新聞も読んでない。もし政権が崩壊したらどうするんですか?」

 もちろんスマホは皆ありますが、それ以前に、時事ニュースに目を光らせて過ごす時間は露ほどの魅力もないのでした。今はこの薪を割って火を起こし、お米を炊くことが大切。夜空の下で焚き火を囲んで静かに過ごす時間が大切。思えば、ニュースを毎日チェックするよりも生々しい「生きる」ということに、全力で向き合って暮らしていた、贅沢な時間でした。

 一昔前、私たちのおじいちゃんおばあちゃんの世代までは、家庭のちょっとした空間でも野菜を育て、田んぼがあれば一族総出で一年食べていけるだけのお米を育て、「食べていける」状態を常に保つように生きてきました。しかし、それからほんの数十年で、農と食卓はあまりにもかけ離れ、農民とそれ以外がきっぱりと分断されてしまいました。ロシアは国策としてダーチャ(農地つき別荘)が普及しているそうですが、それは自給=強さと知っているからこそでしょう。生きるのに大事な順に、依存から脱却していけたら・・・安心、気楽!

 国家経済がどうなろうとも、種を継いでいけば、育て続けていけば、ひとまずは「食って」いける。種と土と、火と水と。最終的にはそれさえあれば、どこででも生きていける。そんなことを子どもにも伝え、どんな場所にいても忘れないようにしたいと思っています。

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連載のテーマを募集中です。こんなテーマで書いて〜というご意見ありましたら、miyaまで。

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つくば自然育児の会 連載記事一覧:
 【Vol.19】冬こそ!「熱源の確保」[2021/11/29]
 【Vol.7】セットで大切「食と農」[2019/06/20]
 【Vol.6】奥が深いよ「自然なお産」[2019/04/25]
 【Vol.5】未来を守る「持続可能な子育て」[2019/02/17]
 【Vol.4】まずは家庭で「お手当て」 [2018/11/29]
 【Vol.3】強い子になる「外遊び」 [2018/09/22]
 【Vol.2】気軽に試そう「布おむつ」 [2018/06/19]
 【Vol.1】春夏に楽しむ「おむつなし育児」 [2018/05/12]
 電子レンジなし生活のコツ [2015/08/07]
 虫さされ対策 [2015/07/11] 
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2019年04月26日

【お気楽自然育児Vol.6】奥が深いよ「自然なお産」

つくば自然育児の会の会報で連載してきた原稿を、こちらでもアップしておきます。
1ヶ月ほどで、執筆した時期に日付を移動しようと思っています。
(2019年春の原稿で、内容は2年ほど前のものです。)

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(2019/04/25執筆 会報no.246 5月分)

【お気楽自然育児Vol.6】奥が深いよ「自然なお産」


miya :ホームスクール&家庭保育で9・4・2・0歳の子育て中
茨城県北の大子町に移住しました!

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 3月12日。出産予定日の前日に、我が家に4人目の子どもが誕生しました。引越し予定が二転三転し、お産の場所も出張助産師さんも、茨城県の守谷から栃木県の那須、千葉県まですべて検討したり相談に行ったりとバタバタ続き。自宅出産難民からプライベート出産に踏み切るまでと、お産のあれこれを振り返ります。

●どこで?誰と? ぎりぎりまで揺れた出産スタイル

 流産しやすい私は、妊娠3ヶ月頃に初めて妊娠検査薬を使います(自己責任です)。夏の終わりからつわり全開で陽性なのは当然でしたが、9月半ばに検査薬で陽性を確認後、さて行くか〜と9月下旬に守谷助産院で診察してもらいました。元気な胎児を確認できたのですが、もう80歳になられる白井先生、なんと守谷助産院を別の先生に引き継ぐとのこと。ガーン。産婆さんさながらの見識と大らかさ、白井先生のもとで産みたかった…と落ち込む暇もなく、二人の先生との妊婦健診が始まりました。(※自宅出産したいつくば&周辺の方、守谷助産院にご相談を。)
 予定日は3月13日。2月には茨城の最北、大子町に移住を予定していたので、守谷から2時間かかる大子町はちょっと…と言われ、県北の出張助産師さんを3名教えていただきました。中期までは守谷で診てもらい、後期は県北のどなたかと進める予定でした。
 私は2人目以降、数十分のスピード産(過去会報に書いています)、助産師さんが到着に間に合わないのが大前提、それでOKなのですが、白井先生が直接交渉してくださった先生に電話で相談したところ「大子町なんて雪が降ったら辿り着けない」「責任取れない」などなど、かなり及び腰なお返事。結局「ご自身でお近くの産院などを探してください」と連絡があり、助産院探しは振り出しに戻りました。

 大子から一番近い出張助産師さんは那須方面、栃木県大田原で開業したばかりの、こうのとり助産院。経緯をお伝えするとかなり面食らった様子でしたが、分娩の仮予約が取れました。ただし入院してのお産が立て込んでいるので先生も出張はできず、入院して産むことに。でも陣痛が来てから移動しても絶対間に合わない!夫と助産師さんと相談した結果、「車で40分の距離でしたら家で赤ちゃんは産んでから車に乗せてもらって、なるべく胎盤が出る前に着くのが出血の心配がないでしょう」なんて具体的な提案をしてもらい、ひと安心。次女と長男を夫が一人で取り上げてきたこともあって、先生も大胆なプランに思い至ったようでした。

 しかし今度は、千葉から大子町への移住予定が二転三転。ほぼ決まっていた物件の家主さんが条件を変えてしまい、次に決まりかけた別物件では先住の方の退去時期が遅れて2月に入居できなくなって…出産前の引越しが怪しくなってしまいました。
 守谷助産院は隣に滞在できる一軒家があるから、一家で守谷に泊り込んで産もうか?との話も出ました。しかし飼いヤギの世話を考えると無理そう。このまま千葉で産むか?出張助産師さんはどれもいすみ市から1時間以上かかる距離ですが、伊東先生(※)ともつながりのある先生が1時間のところにいらしたので、ここに相談しよう!と決めました。でもすでに妊娠後期。また断わられたらどうしよう…お叱りを受けるのでは…と、ついつい電話をかけるのを後回しにしてしまいます。
伊東先生 …小山母乳育児相談所所長、つくば自然育児の会の顧問助産師。
他にも北関東で複数の育児の会の顧問をされています。


 まだ引越しが産前になるか産後になるか、関係各所と丁々発止の段階で、後期の検査を受けに千葉で近所の個人病院(もりかわ医院)を受診。森川先生は見た目、夫と同年代の男性なのに発言は産婆さんみたいな方で「足が冷たいよ、こんなんじゃまだ冷えてる。もっともっと足をポッカポカにしてね」「実はお腹張るでしょ、尿モレも。ちゃんと腹帯かトコちゃんベルト巻いて!赤ちゃんを上に戻したら張らないよ」「陣痛きたらお産早いタイプじゃない?」なんて言うので感心してしまいました。これまでに出会った数々のお医者さんに、まともなアドバイスをもらったことはなかったですから。さらに引越しの不安もやんわり伝えると「引越し前に生まれたら救急車呼ばずにうちに来てね、カルテあるんだから。(個人病院だから)正産期以降じゃないと受け入れできないけどね」「あなたは絶対に安産だね、まず早産にはならないから安心していいよ」なんてありがたいお言葉。

 もしかしたらこのままどこにも頼めずに、自宅で家族だけで、いわゆるプライベート出産というものになるかも、と夫婦で話していた時期。アパートから目と鼻の先のもりかわ医院に心強い言葉をもらい、引越し先や時期がはっきりしなかったら、家族で産もうかな、との思いが強くなっていきました。
 実は出張助産師さんにも色々あって、自然派の我が家と意気投合する場合もあれば、「何かあれば助産師界全体の評判を落とすから勝手なことしないで下さい」という先生と方針が合わない場合もあり、新たに関係性を築くのが億劫に…。スピード産なのを伝えると、同じ出張助産師さんでも「責任とりたくない派」と「大丈夫派」に分かれます。私たち夫婦にとって、誰にお産を委ねるか、というのはすごく大事なことだったのです。

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●はじめてのプライベート出産

 たくさんの方に「ちゃんと医療従事者のもとで産んでね」「何があるかわからないのがお産だよ」と釘を刺され、素直に粛々と妊婦健診を受け続けつつも、『プライベート出産』って実際どうなのか、周りの経験者たちに聞いて回りました。南房総には一度も診察を受けずに本能だけで2人産み育てている友人がいるし、育児の会のOGさんやお友達にも話を聞きに行きました。千葉では一番近所にブラウンズフィールドの中島デコさんや長女のシネマちゃん(里帰り出産)がいるから、いざとなればここに相談しよう、とも思っていました。
どこで誰とお産するか決まらないうちから、すべての助産師さん、お医者さんたちに疑問点をどんどんぶつけて、対策を教えてもらっておいたのも、思えばプライベート出産に踏み切る布石だったのかもしれません。(※お産に関するQ&Aと、実際のお産で実行したことなどは後でまとめてご紹介します)

 3月12日。予定日は明日。さぁ、産後しばらくはお風呂にも入れないわ〜と、お風呂を沸かしてもらいました。半月ほど続いたお決まりの前駆陣痛に振り回され、暖かな房総半島の気候も相まって、汗が気になっていたのです。前駆陣痛の合間に「まだまだ、まだ産まれない、だって絶対お風呂に入りたいからー」と呟きながら服を脱ぎ、お風呂に岩塩とアロマオイルを溶かして、1時間ほどのんびり半身浴。痛みもなくなって、あー贅沢♪髪も洗ってさぁ出ようという18時頃、いきなり強い本陣痛が始まりました。

 最初から3分間隔の本陣痛。絶対にドライヤーで髪を乾かすんだと妙な執念を燃やして、陣痛の合間にざばぁっと湯船から立ち上がって体を拭いては、陣痛の痛みに「やっぱ無理〜」と温かいお湯に浸かりなおすこと数回。夫は脱衣所にバスタオルを敷き、お産セットを用意して準備万端です。夫が時計を見て時刻を読み上げ、別室の長女が下2人の相手をしながら陣痛の間隔をメモ。「服着たい〜 髪乾かしたい〜」と唸りながら湯船から出られない私。結局痛すぎてもう無理〜!となり、「ここで産む、お風呂で産む〜」「産んだらお布団で寝っ転がりたい、バスタオルもお産セットもお布団に移動して〜」など、こまごまと夫にリクエストしました。

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 お風呂で陣痛がぐっと進むとか、お湯の温かさで陣痛を和らげるとか、自然分娩の本で読んだことは本当でした。温かいって素晴らしい〜と絶賛しながら浴槽のへりにつかまって陣痛に耐えるうちに陣痛は1分間隔になり、もう絶叫。パチンと弾ける感覚に「破水した!」と大声で伝えました。

 痛いのが苦手な私は、育児の会でも何人かが言っていた「オキシトシンのシャワー」「ピンクのお花畑」が信じられなくて、でも何とか陣痛の痛みを喜びにつなげるべく、前駆陣痛の頃からイメトレをしてきました。それは、大好きなムラサキハナナと菜の花が咲き乱れる中を、赤ちゃんがハイハイしてやってくる光景。湯船で陣痛のたびに細く長く絶叫している間もひたすら、紫と黄色のお花畑を進んでくる赤ちゃんを思い描いていました。

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 痛みが最高潮を迎え、赤ちゃんの頭が出そう!というときには夫がお風呂場に来てくれました。「頑張ってるねぇ、エライねぇ、すごいよー、えらいよー」言葉を尽くして夫に励まされながら、ついに赤ちゃんの頭が出ました。泣くでもなく眠っているような、ぬーんという顔だったそうです。ふと赤ちゃんが溺れたらどうしようと思って、湯船の栓を抜きました。下半身のアレコレが赤ちゃんの頭で押し出されて出ちゃうちょっとアレな件も、排水口に流してもらうことに(なんて楽チン!)。
 さらに2回ほどの陣痛を経て胴体も出た瞬間、「ほぎゃあ、ほぎゃあ」元気な声が響き渡りました。赤ちゃんは浴槽内で夫が両手で受け取り、手を伸ばしていた私に即座に渡してくれました。これまで、タオルで拭かれた後の赤ちゃんしか受け取ったことがなかった私は、クリーム状の胎脂でべっとりとした赤ちゃんにびっくり。ぬるっとすべりそうなのを注意して胸元に抱き取ります。全身で産声をあげている小さな赤ちゃん、これがお腹にずっといたのねと思うと、まだまだ痛みの余韻があるけれど「可愛いねぇ、可愛いねーぇ」と、思わず声が出ました。産んですぐにこんな気持ちになれたのは初めてでした。

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 出産したのが18時半。本陣痛の開始から32分で産まれました。次女の15分、長男の50分の中間といったところでしょうか。メモを見ると3分間隔が5回、2分間隔が6回、1分間隔が9回。なんにせよ予想通りのスピード出産でした。
 湯船で胎盤が出ると産道からお湯が体内に入った場合に感染症の可能性が心配、と本で読んでいたので、まだ胎盤が出ないうちに、夫にお姫様抱っこでお風呂から布団へと移動してもらいました。母子ともに拭いて拭いて、乾いたタオルを敷いて古い布おむつを何枚もあてて、後産の準備もばっちり。
 赤ちゃんを胸に乗せて落ち着くと、夫のOKが出たらしく、子ども達がそろそろと寄ってきます。「かわいいー!」「ちっちゃーい!」の合間に「おかあさん、ちがでてるー(涙)」気遣わしげな2歳長男の声。移動のときに少しだけ廊下に垂れたんです、血が。陣痛の叫びも全部聞いたはずで、かなり心配してくれているようでした。

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●胎盤が出るまで19時間以上

 後陣痛の痛みにも温かさが効くと思い、湯たんぽを3つ作ってもらってあちこちにあてて乗り切りました。温かいって素晴らしい〜。しかしいくら後陣痛で苦しんでも、胎盤は全然出てくる気配がありません。赤ちゃんに乳首を吸わせようとするものの、まだ夢の中にいるような様子。時折わずかに目を開ける以外は、うっとりと眠ったままでお乳を咥えるそぶりも見せません。疲れているのかなぁと、へその緒に注意しながら脇に抱いて寝かせ、私もゆっくり休みました。布団の中では、母子ともにほぼ裸でバスタオルやおしめの上に寝ていたので、全裸の赤ちゃんが布団の中でおしっこをしても、さっとタオルを替えるだけで対処できました。(こういったお世話は全部夫です、自分ではやれませんでした)

 夜も夫は寝ずの番、後陣痛の波がくるたびに駆け寄って世話してくれるのに、胎盤の出ない申し訳なさ。夕方18時半に出産したけれど、20時、24時、深夜2時になってもまだ出ません。経験上は産後すぐに胎盤が出るし、白井先生たちからも、遅くとも1〜2時間で出すほうがよいと聞いていたので、焦りが募ります。長男出産のときに白井先生がしてくれた、胎盤を押し出すマッサージ(?)を思い出し、子宮が収縮するたびに試みるものの、痛すぎて気絶しそうに。何時間かは繰り返し頑張りましたが、「こんなに痛いってことは、やんないほうがいいんじゃない?そもそも動物だったら必要ないんじゃ?」と思い始め、夫にも「何か変だよ、頭で考えるより体が絶対だめって言ってる気がする」と伝えて、自然に胎盤が出てくるのを待つことにしました。

 「朝になっても出てこなかったら(近所の)もりかわ医院に行こうか」と言われ、「友達も翌日まで待ってみたって言うし、もうちょっと調べてみようよ」と懇願。夫がWeb上で情報を探しまくって、14時間待った人のブログ記事を見つけてくれました。そのご夫婦が参考にしている自然分娩の本には、江戸時代のお医者さんの文献から「胎盤を1日2日待つのは当たり前、7日後に出る人もいる」と引用してあったそうです。極めて冷静で論理的な書き手さんだったので信頼できると感じ、私たちも落ち着いて待とうと腹をくくりました。

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(お産から16時間、まだつながったままの二人)


 とはいえ、ちょっとだけへその緒を引っ張ってみたり(ウンともスンとも言いませんでした)、おっぱいを刺激して子宮の収縮を促進させてみたり、多少のちょっかいも出してはみたんですが。どうにも出てこないので、朝には「もう、そのうち出てくるやろ〜」と開き直り、なるべく寝ました。1〜2時間おきの不規則な後陣痛を痛がりつつ、13時半すぎ、ついに大きな後陣痛の波がきて、かなり大きめの胎盤が出てきました。出るときは夫が洗面器かホーローおまるを構えて胎盤を受け取り、重さも量ってくれました(平均的な胎盤が500gに対し、なんと776g!大きい!)。赤ちゃんの誕生から胎盤が出るまで、実に19時間37分!よく待ったものです。

 胎盤が子宮からはがれると出血が起きます。私の出産は毎回、出血が大量で、次女のときは脳貧血で何度も卒倒していました。血が止まりにくい体質なのかと思っていましたが、なんと今回、最も出血が少なかったのです。存分に子宮が収縮した状態で胎盤が出てきたのは、4度目の出産を迎える母体が、ダメージ(出血)をなるべく減らすように調整してくれたのかもしれません。骨盤をさらし(産後ケアベルト)でぎゅっと締めてもらい、古いおしめを3〜4枚あてた上から産褥ショーツを履かせてもらうと、ひと安心。
 脱ケミカルの一環で今回、初めて産褥パッドを1枚も使わずに産後を過ごしました!たくさんの古おしめをじゃんじゃん交換していったのですが、これが極上の肌触り♪今まで使っていた産褥パッドとは比較にならないほどの気持ちよさでした。(布おむつ派のみなさん、汚れが気になるおしめは捨てずに取っておいて、次のお産でぜひ産褥パッド代わりに使ってみてください^^)

 新生児黄疸が非常に非常に強い、我が家の子ども達。次女も長男も苦労したので、何とか黄疸を軽減できないかと助産師さんたちに聞いたところ、こうのとり助産院の山田先生から「だから西洋医学では産まれてすぐにへその緒を縛っちゃうんですよ」との答え。さらに黄疸の仕組みについても(夫が)調べまくった結果、「赤ちゃんが産まれて3分後くらいにへその緒を紐で縛る」と決めました。自然なお産の本では、赤ちゃんが胎盤よりも上にいれば黄疸は起きないとも書いてあるんですが、背に腹は代えられません。胎盤が出てから切るつもりでいたので、赤ちゃんと私はへその緒で19時間以上つながったまま。胎盤が出たらへその緒のもう一箇所も消毒した紐で縛り、二つの紐の間を消毒したハサミで切りました。

 へその緒を切ったあと、夫は胎盤の下処理に取り掛かり、今回またレベルアップした美味しい胎盤料理の数々を作ってくれました。前回と同じ刺身(生姜醤油で)&煮付けだけでなく、ボイルしてレモン塩をのせたおしゃれなものと、塩して焼いた焼肉風まで!夕方から翌日にかけて、大喜びで食べまくりました。前回に比べて、食べても食べてもまだある、と驚くくらい、やっぱり今回の胎盤は大きかったです。

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●Q&Aと実践したこと

 出産についての疑問・不安を、妊婦健診で医療従事者の方々に会うたび、プライベート出産体験者に会うたびにどんどん聞いていった内容について、まとめてみます。(情報の利用は各自の自己責任で!)

 助=助産師
 医=産婦人科医 
 体=プライベート出産の体験談(口頭&Web) で書きます。

「妊娠後期のお腹の張り、子宮口の痛みはどうすれば?」
医:腹帯やトコちゃんベルトで下がってる赤ちゃんの位置を上に戻してあげる。子宮口を圧迫しなければ張らない。
体:動きたくないときは動かないし、動きたければ動く。頭で考えすぎずに体に従う。
 ⇒さらしで骨盤を締め、安静にしてました。

「新生児黄疸を予防・軽減するには?」
助:西洋医療では出てきたら早めにへその緒を結ぶ(血液を逆流させないため)。
 ⇒3分後に結びました。
助&医:とにかく産後は陽に当てる。あまり神経質にならなくても1ヶ月陽に当てれば大丈夫。
 ⇒日々実践。
助:母親がO型、父親がそれ以外の血液型の組み合わせの赤ちゃんに黄疸が多い。

「会陰の傷をトラブルなく治すには?」
助:ゆっくり産んで会陰をしっかり伸ばしてあげるに限る。ちゃんと伸びていれば割けない。
助:本来、血は汚いものではないので(※傷を治してくれるという意味)、正座で赤ちゃんの世話をしていれば縫合なしでもきちんとくっつく。あぐらがダメ。
助:産褥熱は会陰の傷ができた人に起こる。昔は清潔でない古布をあてることがあったから、ばい菌が入りやすく、産褥熱を起こした。
 ⇒2cmくらい割けました。トイレでの汚れが心配だったので、清浄綿を買っておいて産後はトイレでこまめに拭きました。傷口の消毒は、アルコールだと絶対に痛いと思い、抗菌力の高いティーツリーオイルを塗ってもらっていました。香りがよく、スウスウするけどオイルだから傷口にしみることもなく、とても良かったです。

「後期検査のGBS(B群溶血性連鎖球菌)にひっかからないためには?」
(GBS陽性となると出産前に1週間ほど抗生物質を飲み続けるか、分娩時に抗生物質の点滴をしながらの分娩になる)
助:本来は常在菌にすぎないので、体温をあげてとにかく抵抗力を高くしておけば大丈夫。
 ⇒クリア!
助:検査自体の拒否をする場合は、母子両方の責任を問わない書面を書き、医師・助産師双方に提出する。

「産後の出血を少なくするには?」
助:胎盤のはがれで無数の血管が千切れた状態。子宮が収縮すれば傷口が塞がる。輪状(りんじょう)マッサージでとにかく子宮を早く収縮させる。
医:スピード出産ということは出血も出やすい。骨盤を早く締め、子宮も早く収縮させる。
 ⇒胎盤が出た後、すぐに産後ケアベルトで締めました。

「へその緒の処置はどうするか?」
助:二箇所を紐で結んで、その間を消毒したハサミで切る。
体:そのままくっついたままで過ごした。4〜5日でカリカリになって取れた。

「おへそのケアはどうするか?」
体:自然に乾燥して治った。
 ⇒長男出産のときのおへそケアキット(粉と消毒液)を使うつもりが見つからず、おへそを日光にあてて乾かす日々。へその緒は5日で取れ、そのあとのジュクジュクは特に意識して日光にあてると(へその緒が取れてから)3日で治りました。念のため、あとで助産師さんに聞いたところ…
助:今は粉も意味がない、治る日数が同じということで、おへそケアは消毒液のみになっている。(えぇー!)

※会陰の傷のケア、新生児黄疸対策、おへその処置など、
 詳しい経過はこちらにまとめています。⇒医療的Q&Aと実践したこと

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●時間がかかる、でも意外と穏便だった行政手続き

 プライベート出産への周囲の、特に行政の風当たりの強さは様々な体験談を見聞きして知っていました。盗んだ子じゃないことを証明するために、妊娠中の妊婦姿の写真もへその緒も必要とか、近所の人が通報しちゃって市役所・保健センター・児童相談所の職員が自宅に詰め掛け、厳しい取り調べを受けた、とか…。
 そんなの産後の心身には辛いだろうから、出生届はなるべく後で、期限ぎりぎりに出そうと思っていた、のですが。産後3日で急にアパートの改修工事が決まって、騒音と暗闇で生活が困難になることが判明。急遽、友人宅に身を寄せつつ、茨城県北の大子町への移住を早める調整をし、なるべくすぐに引っ越したくて産後5日目には出生届を出してもらいました。見聞きした失敗談を参考に、母子手帳に出産時の情報はきっちり記入、身長体重なども全部測定して書き込みました。

 幸いにも提出先の役所(千葉県いすみ市岬庁舎)は、ブラウンズフィールドのデコさんの長女、シネマちゃんのプライベート出産も対応していたため、大騒ぎになることもなく、シネマちゃんの書類を引っ張り出して参照しながらの穏やかな行政手続きだったそうです。まず、妊婦健診をひととおり受けてあり、エコー写真や健診の記録、検査結果や領収書まで揃っていたことが良かったようでした。また、窓口の人たちにプライベート出産の対応経験があるかないかでも大きく違うようでした。

 そして2週間後、法務局の方が自宅を訪問して事情徴収。とはいえ波風立たぬようとても気を遣って丁寧に接してくださいました。(地方でも年に1人はいるとの事) 数日後、ついに赤ちゃんに日本国民として戸籍と住民票が与えられ、4月初旬には家族全員の住民票を茨城県へ移動することができました。友人から聞いていたとおり、認められるまでには届出から2週間以上かかりました。

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●自宅出産後の生活は…

良かったこと:出産の様子を見ていたので、2歳の息子でさえ母への気遣いをするようになっていました。また、近隣の仲間たちがちょこちょこ手作りのおかずを差し入れてくれたり、上の子ども達を遊びに連れ出してくれたりして本当に助かりました。

困ったこと:夫が一人何役もこなしていて、時には殺気立っていて、怖いし、気兼ねしたり我慢したり無理したりで意外と私までヘトヘトに…。上の子ども達がいると、産婦のケア以外に、子どものお世話にもかなりエネルギーを取られるので、夫には申し訳なかったな、と思います。本人は、すっごく楽しかった!!と言いきっていますが。。。

 あと、もう出産はしないと思うけど、万が一そうなったら、今度は自宅で産んだ後、美味しい料理と至れり尽くせりのケア、ラグジュアリーな入院生活…ってのをしてみたいかも!

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 好きな言葉は「リスクヘッジ」、石橋は叩きまくって渡る前に壊しかねない私ですが、いろんな事情が重なって、一度だけでもやってみたかったプライベート出産を体験することができました。もちろん責任は取れませんから、誰にでも勧めていいものではないし、お産は決して侮ることはできません。ただ、胎盤が20時間近くかかって出てきたことや出血がとても少なかったこと、産後の経過がとても穏やかで順調だったことなど、まだまだお産は奥が深いなぁ、と思います。
 今回も素晴らしい医療従事者の方々に出会うことができ、たくさんの学びをいただきました。フル稼働で頑張ってくれた夫、本当にありがとう!そして忠告から体験談まで、貴重なアドバイスをくださったみなさんにも、心からお礼申し上げます。長文にお付き合い下さりありがとうございました。

※blog『雑草屋の嫁日記』でラベル「自宅出産」のついた記事に関連記事があります。興味のある方はよかったらどうぞ〜。

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関連記事:この連載原稿は以下の各記事をまとめ、行政対応を書き加えたものです。
 プライベート出産記(1)自宅出産難民
 プライベート出産記(2)お風呂で産んでみた
 プライベート出産記(3)胎盤が19時間以上出てこない
 プライベート出産記(4)医療的Q&Aと実践したこと
 続きが書け次第、更新します、多分…(行政手続きや胎盤レシピがまだなのです)

つくば自然育児の会 連載記事一覧:
 【Vol.19】冬こそ!「熱源の確保」[2021/11/29]
 【Vol.7】セットで大切「食と農」[2019/06/20]
 【Vol.6】奥が深いよ「自然なお産」[2019/04/25]
 【Vol.5】未来を守る「持続可能な子育て」[2019/02/17]
 【Vol.4】まずは家庭で「お手当て」 [2018/11/29]
 【Vol.3】強い子になる「外遊び」 [2018/09/22]
 【Vol.2】気軽に試そう「布おむつ」 [2018/06/19]
 【Vol.1】春夏に楽しむ「おむつなし育児」 [2018/05/12]
 電子レンジなし生活のコツ [2015/08/07]
 虫さされ対策 [2015/07/11] 
posted by miya at 00:00| Comment(0) | 自然育児の会連載 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする