つくば自然育児の会の会報で連載してきた原稿を、こちらでもアップしておきます。
1ヶ月ほどで、執筆した時期に日付を移動しようと思っています。
(2019年夏の原稿で、内容は2年ほど前のものです。)
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(2019/06/20執筆 会報no.247 7月分)
【お気楽自然育児Vol.7】セットで大切「食と農」
miya :家庭保育で9・5・2・0歳の子育て中
長女は小学校に行き始めました〜
第4子が生後3ヶ月になり、新生児〜乳児期のおむつなし育児(ホーローおまる使用)が本当に楽チンで素晴らしい!と日々感動しています。だって布おむつが汚れないんです!赤ちゃんの秘めた能力に驚くばかり。次に赤ちゃんを予定している方で、新生児からのおまる生活、やり方など気になる方は声をかけてくださいね。
さて今日は「食と農」がテーマ。真面目なことも書きますが、巡り巡って「気楽な育児」へとつながりますので、どうかお付き合いくださいませ〜。
●「食べていける仕事」って何だ 「食える仕事」「○○で食べていく」「食い扶持を稼ぐ」・・・どれも、自立して働くことを指す言葉です。労働の結果が、お金ではなく「食べる」ことで表されています。そして、「You are what you eat.」(あなたは、あなたの食べたものでできている。)そう、食べることは、生きることに直結しています。
今、95%の都市人口を、わずか5%未満の農業人口で養っているといいます。つまり、20人の現代生活者をたった1人の農家で賄うということ。当然、農業は大規模化した大型農業で、農薬・肥料・F1種の揃い踏みにならざるを得ません。
すでに少子高齢化が叫ばれているのに、農業人口の高齢化はさらに深刻。子ども達が大人になる頃には、一人の農家でいったい何十人を養うのでしょうか。「買えばいーじゃん」では済まされない事態になりそうですね。
●野菜の背景を感じる暮らし 食べ物を大事にしなければならない理由がわからない、という人が増えています。捨てればいいじゃない!という人や、けちけち食べやがってせせこましーんだよ、貧乏くせーな、なんて人もいます(汗)。子どもだけでなく大人にだって、食育の大切さを感じます。
種を、まいてみませんか。私たちの身体をつくる食べ物を、お野菜を、育ててみませんか。毎日のお世話を、お母さん自身が、楽しんでみませんか。心を寄せて、声をかけて、水をやって。そんな姿を一緒に見ている子どもは、同じように大事にできるようになります。一緒に芽生えから成長を見守り、野菜を収穫して食卓に並ぶまでを、ぜひ体験させてあげてください。
生産者の方と直接お話しながら買える、ファーマーズマーケットもすごくいいですね。つくばでは、つくいちなどのほか、山新でも毎週日曜に始まりました。ぜひお子さんと一緒に、会話しながら買い物を楽しんでください。「ニコニコ優しいおばあちゃんの卵、美味しいねぇ」「おひげのお兄さんのお野菜、立派だねぇ」なんて、振り返りながら食べていくと、例えスーパーで買った食材でも「このキャベツは誰が作ったキャベツなの?」「キャベツ農家さんがいっしょうけんめい育ててくれたんだよ」「じゃあこのお豆腐は?」なんて会話が、日常になってきます。
「三つ子の魂、百まで」。食卓で、お父さんお母さんが食べ物を、ひと粒ひと粒まで大事に扱っているかどうか。畑から食卓までの生命の流れ、人の手のかかりようを、暮らしの中で感じているかどうか。三歳くらいまでに、食育の土台ができあがるように思います。
●とても悲しかった出来事 お子さんがエプロンや洋服にこぼしたお米、お野菜。お母さんが、パッパと払い落としていませんか?テーブルにこぼしたおかず。台拭きでざーっと拭いて、捨てていませんか?お皿の食べ残し。三角コーナーにドサッと入れていませんか?親が、お母さんが、ひと粒のお米、ひと切れの野菜を尊ぶかどうか。お子さんの食育は、ここからだと思っています。
つくばにいた頃は来客がとにかく多く、簡単な料理を出すこともしょっちゅうでした。でも、私たちが育てたお米をお客さんがパッパと払い落としたとき、頭をカナヅチでガァンと殴られたほどのショックを受け、呆然としてしまいました。
(そのお米は ひと粒ひと粒 慎重に土におろし 並べ 苗に育てて 稔りを得るまで たくさんの虫や鳥と競い合い 果てしない攻防を繰り返し 手で刈り 手で干し 手と足で脱穀し 精米し 心を込めて炊いたお米です そのお野菜は たくさんの草や虫に囲まれ 雨だけを頼りにたくましく育ち 輝く宝石を見つけたような思いで 恵みに感謝して収穫し あなた方の喜ぶ顔を想像しながら 優しく洗い 丁寧に刻み 調理したお野菜です)
そんな言葉がワンワンと頭の中を駆け巡りましたが、農と離れて生きる人にそれを伝えるのも難しくて、ただただ黙ってうつむいていました。気まずくなりたくない、嫌われたくない、という気持ちもあったと思います。以来、食べ物を大事にする・しないが、お付き合いの中で大事な要素になり、またお互いに傷つく要因にもなっています。大らかと大雑把の線引きはなかなか難しく、神経質な人〜って嫌われるのも怖くてあまり言えないんですけどね・・・。
●値段がつけられない 我が家はずっと、自然農というやり方でお米や野菜を育ててきました。かつてはあちこちで直売もしていましたが。ごくごくまれに、値段だけを見て「スーパーだともっと安いのに」と言ってくるお客さんに対し、種をまいた日から今この瞬間までの途方もない手間、苦労を・・・説明する気すら起きず。
お米も野菜も、私たちの中では大切すぎて、「商品」として割り切って売ることも、スーパーのような値段で売って何の思い入れもない人に食べられることも、耐えられなくなり、販売そのものをやめてしまいました。
お米なんて特に、一年がかりで魂込めて育てているので、絶対に値段がつけられない、というのは自然農仲間とよく話すことです。
●「大事に食べる」を赤ちゃんから 私は長女が1歳になる前から保育園に預けていて、その頃はせっせと離乳食なんてものを作っては与えていました。でも、スープは倒すわ、おかずはスプーンで飛ばすわ、頭にごはんを塗りたくるわで、出勤前も帰宅後も疲労困憊。高知でかかりつけだった
小児科の栄養士さんに相談したところ、「遊び食べするならお盆ごと全部下げちゃって!泣いてももう出さないで。すぐ覚えるから。お腹すいてたらちゃんと座って食べるようになるから。」とアドバイスをもらい、すぐ実践。朝7時から夜7時まで12時間預けていたので、夕方の間食が出ることも考えて夜は少なめに。すると1週間で悪行はおさまり、じっと座って食べられる1歳児になりました。
春の木村先生(※)の例会でもいいアドバイスがありました。きちんとお腹をすかせて食卓につき、盛り付ける量を少なくすると、食べ散らかさなくなるって、朗報ですよね。
※木村先生 …東関東子育てサポートセンターを主催。保育園運営と並行して関東各地で親子の心身を育てる父子遊び講座を開催。つくば自然育児の会も大変お世話になっている先生です。 育児の会に入会して、2人目以降は離乳食は一切やらず、1歳すぎてから母乳以外(固形食)をあげ始めるようになりました。遊んだり立ったりしたら即、お膳を下げるので(決して戻さない)、1〜2ヶ月で覚えてくれました。マナーとして理解しているというよりは、反射に近い理解なので、4歳頃までは真の意図はわかっていないかもしれませんが。子どもと同時に相手の方や作ってくださった方も大切にしたい我が家としては、どこに連れて行っても大丈夫なのは本当に助かっています。
「まだ赤ちゃんだから」「まだ小さいから」、「仕方ないよね」。食べ物で遊ぶのを、食べ散らかすのを、食べかけで残したり吐き出したりするのを、何歳までそのままで、何歳になったら教えるかは、ご家庭それぞれの方針によるでしょう。
ただ、目の前の食べ物を大事に食べるということは根源的なもの。育児の会にいれば面倒な離乳食作りは不要とわかりますから、大人も食べられる固形食で楽をして、さらに食べ散らかさない工夫をあれこれしてみて、家族みんなで気持ちよく食事の時間を過ごせるように、楽になるように、試してみてはいかがでしょう〜。
(さかのぼって、おっぱいタイムにスマホやテレビなど他のことをしない、というのも善きお手本なのかも!)
●どこでも生きていける 動物として考えると、生きるのに大事なことは、食べること、動くこと、眠ること。決して、紙幣を集めることではありません。今どき「食べていける仕事か」を心配するのはごもっともですが、極論を言えば、食べ物を育てていれば、そこそこ働くだけでも大丈夫なのではないかな、、、と思っています。(うちではちょっとだけ働くことを「お金を摘みにいく」と言っています) 色んな海外の方と話していると、ハイパーインフレで1万円が次の日に1円以下になった、なんて話もあって。でも、大根1本は次の日も大根1本。農って本当に重要です。
去年、千葉県いすみ市にある「パーマカルチャーと平和道場」で
研修生として暮らしていた頃は、「消費者から創造者になろう!」のスローガン通り、とにかく日々の暮らしを創造していました。近隣の方々との交流も盛んで、例えば伐採した木(=薪にできる)をくれるというので処分のお手伝いにいくと、さらにお礼といって大量のお野菜をいただいたり、産みたて卵をくださったり。貨幣に依存しすぎない、心あるギフト(贈与)の交わし合いの中で暮らしていました。
あるとき、都内の大学教授がゼミ生を引き連れて見学取材にやってきました。田畑や火起こし、バイオトイレにテント暮らし、古民家の修繕、タイニーハウスのセルフビルドなどをひと通り見た帰り際、教授はこう訊いたのです。「君達はテレビもないし新聞も読んでない。もし政権が崩壊したらどうするんですか?」
もちろんスマホは皆ありますが、それ以前に、時事ニュースに目を光らせて過ごす時間は露ほどの魅力もないのでした。今はこの薪を割って火を起こし、お米を炊くことが大切。夜空の下で焚き火を囲んで静かに過ごす時間が大切。思えば、ニュースを毎日チェックするよりも生々しい「生きる」ということに、全力で向き合って暮らしていた、贅沢な時間でした。
一昔前、私たちのおじいちゃんおばあちゃんの世代までは、家庭のちょっとした空間でも野菜を育て、田んぼがあれば一族総出で一年食べていけるだけのお米を育て、「食べていける」状態を常に保つように生きてきました。しかし、それからほんの数十年で、農と食卓はあまりにもかけ離れ、農民とそれ以外がきっぱりと分断されてしまいました。ロシアは国策としてダーチャ(農地つき別荘)が普及しているそうですが、それは自給=強さと知っているからこそでしょう。生きるのに大事な順に、依存から脱却していけたら・・・安心、気楽!
国家経済がどうなろうとも、種を継いでいけば、育て続けていけば、ひとまずは「食って」いける。種と土と、火と水と。最終的にはそれさえあれば、どこででも生きていける。そんなことを子どもにも伝え、どんな場所にいても忘れないようにしたいと思っています。
連載のテーマを募集中です。こんなテーマで書いて〜というご意見ありましたら、miyaまで。・・・・・・
つくば自然育児の会 連載記事一覧:
【Vol.19】冬こそ!「熱源の確保」[2021/11/29] 【Vol.7】セットで大切「食と農」[2019/06/20] 【Vol.6】奥が深いよ「自然なお産」[2019/04/25]
【Vol.5】未来を守る「持続可能な子育て」[2019/02/17]
【Vol.4】まずは家庭で「お手当て」 [2018/11/29]
【Vol.3】強い子になる「外遊び」 [2018/09/22]
【Vol.2】気軽に試そう「布おむつ」 [2018/06/19]
【Vol.1】春夏に楽しむ「おむつなし育児」 [2018/05/12]
電子レンジなし生活のコツ [2015/08/07]
虫さされ対策 [2015/07/11]